ブルーの家にて


ブルーの家にグリーンは来ていた。
仮面の男事件から一ヶ月―――、ようやく落ち着いてきたところだ。
「グリーン、紅茶かコーヒー、どっちがいい?」
ブルーが声をかけてくる。
「コーヒーだ」
「グリーン、人に物を頼むときは、お願いしますって言うのよ」
ブルーは一瞬、反論されるかと思ったが、グリーンは素直に
「お願いします」
といった。
「わかったわ、コーヒーね。ちょっと待ってて」
とブルーは台所のほうへと消えていった。
グリーンは片ひじをついて部屋の中を見た。
ブルーらしく、かわいい小物などで飾られている。
ふと、本棚の上にある写真たてに目がとまった。
あの、ポケモンリーグのときの写真だ。
決勝トーナメントに残ったもので撮ったものだが、オーキド博士は棄権していたのでいつもの三人だ。
三位のくせにブルーがど真ん中で身を乗り出してピースサイン。
グリーンは小さくしか写っていないし、レッドにいたっては半分つぶれている。
それを見て、グリーンはふっと笑った。
「・・・かわらないな」
そうつぶやいたとき、
「何がかわらないって?」
とブルーがコーヒーを持って入ってきた。
「インスタントコーヒーだけど、いいよね?」
ブルーはグリーンの前にマグカップを置いた。
しっかり自分用の紅茶も持ってきていて、グリーンの向かい側に座る。
グリーンはコーヒーを一口飲んだ。
ブルーが何かしゃべろうと口を開いたときだった。
ピンポーン!
玄関のチャイムが鳴り響いた。
「あ、ハイハーイ。グリーン、ちょっとまってて」
ブルーがばたばたとかけていく。
グリーンはコーヒーを飲みながら待つ。
ブルーが何かしゃべっている声が聞こえてきた。
どうやら親しい間柄らしい。
一瞬レッドか? とも思ったが、レッドの声ならばここまで聞こえてくるはずだ。
「まあ、あがってよ」
ブルーの声が聞こえた。
誰だろうと思いつつも、グリーンは先ほどと同じペースでコーヒーを飲む。
ほどなくして、ブルーが現れた。
ブルーよりも小さな男の子を連れている。
赤くて長い髪の毛で、いつも同じ服ばかり着ている。
グリーンとは仮面の男事件以来だが、たしかシルバー、だった。
「一緒でもいいよね、グリーン。これは私の弟のシルバー」
ブルーが言った。
グリーンはいすに座ってカップを持ったままシルバーを眺めた。
足を組んだままグリーンににらまれるとかなり恐いだろうが、負けず劣らずのシルバーはグリーンを睨み返した・・・もとい、みつめかえした。
まさか来客がいるとは思わなかったシルバーは、少し戸惑っていた。
しかもそれは、人付き合いの悪そうな(ごめん)あのトゲトゲツンツン頭(またごめん)ではないか。
たしか・・・・グリーン?
「まあ、座って座って」
ブルーはそういうと、さっきまで座っていたいすにシルバーを座らせた。
もともとブルー一人で住んでいた家なので、いすは二つしかない。
おい、とシルバーが声をかけると、
「大丈夫よ」
とブルーは答えて、かちりとモンスターボールを開けた。
中から飛び出してきたのはカメックス。
「たのむわね、カメちゃん」
そういうと、ブルーはカメックスの上に腰をおろした。
おいおい、ポケモンをいす代わりにするなよ、とレッドかその他の人がいれば突っ込んだだろうが、あいにくそういう人はいなかった。
まあブルーのことだからなんと言われようとカメックスに座り続けるだろうけど。
シルバーがなぜグリーンがこんなところにいるのかいぶかしんでいると、ふとテーブルの上におきっぱなしの封筒が目にはいった。
オーキド博士から、ブルー宛の手紙。切手も消印もない。封もあいていない。
なるほど、とシルバーは一人うなずいた。
グリーンが何の用もなしに他人の家に来るとは考えにくい。
「ねえシルバー、グリーンのことは知ってるわよね」
ブルーがきく。
「ああ」
トキワジムリーダーだということはもともと知っていたが、カントーのロケット団事件、四天王事件を解決したこと、ポケモンリーグ準優勝者だということをブルーから聞かされていた。
そして、レッドとともに、ブルーのかけがえのない友人だと。
「あ、そだ、シルバー、紅茶どお?」
ブルーがいきなりきいた。
「もらう」
「シルバー、人にものを頼むときは・・・」
「ください」
さすがにシルバーは慣れているのか。
ブルーは満足そうにうなずいて
「ちょっと時間がかかるけど、いい?」
ときいた。
シルバーがうなずくと、ブルーは鼻歌を歌いながら台所へと消えていった。
・・・・・・・・・・・。
妙な沈黙が部屋を覆う。
もし第三者がいればすごく息苦しかっただろうが、当の本人たちは特に気にしてはいない。
ズー
グリーンがコーヒーをすする音が響いた。
チクタクという時計の音と、台所から聞こえてくるカチャカチャという音がやけに大きく聞こえる。
しばらくして、グリーンはカップを置いた。
「・・・すまなかったな」
突然そういわれて、シルバーは首をかしげた。
「何がだ」
「ワニノコ強奪事件と図鑑盗難の件だ」
そのことかとシルバーはうなずいた。
「すまなかった」
グリーンはもう一度言った。
シルバーは少し居心地が悪かった。
本当ならば自分はこんなところにいるべき人ではないのに・・・。
「グリーン、オレは・・・オレは本当に盗んだんだ。ワニノコも、ポケモン図鑑も」
シルバーは本当のことを話していた。
グリーンはシルバーに向き直り、まじまじとその顔を見た。
そしてふと視線をずらして、
「手配書にあった顔と違うな」
といった。(ゴールドがいれば爆笑したに違いない・・・)
「でも、それは違っていて・・・」
「オレは証拠がなければ信じない。それでも犯人だというのなら警察に行けばいい」
「・・・」
グリーンはコーヒーを飲んだ。
そしてポツリとつぶやいた。
「あまりブルーや、ゴールドとかいうやつを悲しませるな」
シルバーは驚いてグリーンを見た。
グリーンの顔はカップの後ろに隠れている。
グリーンはコーヒーを飲み干すと、カップをテーブルに置いた。
グリーンはシルバーがじっと自分を見ていることに気づいた。
「・・・? なんだ?」
「いや、おまえがオレが思っていたような人と違ったからな」
再び沈黙。
シルバーはいつも飾ってある写真たてに目をとめた。
いつもの三人。
あの事件のときから、レッドの性格は明るいということはわかっていたが。
なぜそこにグリーンなんだろうといつも思っていた。
なぜねえさんがこの二人をそんなに特別とするかを。
でもなんとなく、姉さんが変わった理由がわかった気がした。
「シルバー、紅茶できたよ。あれ、グリーン、もう全部飲んじゃったの!?」
ブルーの声が響く。
「ありがとう」
「うるさい」
シルバーとグリーンの声が重なった。









初ポケスペ小説。
23巻出る前に書いたものだったりする
だもんで原作でもブルーがカメックスに座ってるって知ったときはかなり驚いた。